2016年9月26日月曜日

欧州ヒト生殖医学会が主催するセミナーに参加しました

理事長の中村嘉孝です。

オランダは不思議な国です。英語でもHollandと呼ばれたりNetherlandと呼ばれたり、オランダ人の事はDutchで、それぞれイメージが違って、ややこしいですね。

オランダと聞くと風車とチューリップの牧歌的な農業国のイメージなのですが、その歴史ある王国の首都のアムステルダムと聞くと、まるで印象が違います。

大麻が合法で、街中のあちこちにある「コーヒーショップ」でマリファナを吸っている客の姿があり、また、カジノ、売春はおろか安楽死も合法で、ゲイ、レズビアンの聖地という究極のリバタリアニズムの国際都市というイメージですね。

今、アムステルダムで開かれていた欧州ヒト生殖医学会が主催するセミナーの帰途にあります。
ドナー卵への核移植、幹細胞から作成する精子と卵子、ゲノム編集など議論の多い新しい生殖技術についてのセミナーで、まことにアムステルダムにふさわしい内容です。銀座の開業前の忙しい時期ですので時間的に無理と諦めかけていたのですが、一泊で帰る最短スケジュールで参加でき、とても良かったです。

一番面白かったのはベルギーの生命倫理学者の話で、レズビアンカップルの一方の卵子をドナー精子で受精し、その胚から精子を作ってもう一方の卵子を受精させれば、カップルのそれぞれが子どもと25%遺伝的に繋がることができます。

今まで考えつかなかった視点で、日本で聞くと違和感のある話でも、アムステルダムの街で聞けば「あっ、そうなんだ」と思えるだけで不思議です。新しい技術の受容というのは、結局は慣れの問題なのだと改めて思いました。










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2016年9月22日木曜日

『男性のみ』お断り

理事長の中村嘉孝です。

ネットでニュースを見ていて、ある記事が目に飛び込んできました。

「『男性のみ』お断りのイタ飯店 差別指摘」

東京のイタリアン・レストランが「『男性のみ』のお客様はお断り」との方針を打ち出したところ、「性差別だ」と批判が起きたというのです。

弊院でも「男性のみ」はお断りしているので、人ごとではありません。
男性不妊外来は行っているのですが、あくまでご夫婦での治療の一環とした運営で態勢を組んでおり、パートナーが受診されていることが前提になっています。

ただケース・バイ・ケースで、お受けしていることもあります。たとえば、思春期の男の子ががんの治療を受ける前に精子を保存しておくため受診することもあります。もちろん、そんな場合にお断りするはずはありませんので、電話でご相談いただければと思います。

弊院のことはさておき、先ほどのイタリアンの店の話。
私も考え方が偏っているのかもしれませんが、男同士なら蕎麦屋とか割烹とかでないと絵面も悪いし、そもそも男だけでイタリアンを食べて旨いのかと思ってしまいます
飲食店などは色々な個性があるからこそ面白いのであって、画一的な対応をする必要はないと思いますが、残念ながら、今回のお店は、安直なポリティカル・コレクトネスに屈して、方針を撤回したようす。

ところで私ごとで恐縮ですが、来週火曜日の午後、男二人でパンケーキを食べに行く予定になっています。










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2016年9月9日金曜日

銀座

理事長の中村嘉孝です。

地方の飲食店などが少し流行ると、銀座に店を出したら、などと考えだす。これだけの客が来ているのだから、銀座に行けばもっと流行るはず、だと思う。たまに来る東京の客からも「銀座に出してくれたら毎週行けるのに」などと、そそのかされる。

どんなものかと不動産屋に物件をあたっていると、それを聞きつけた人から「銀座ですか、さすがですね」などとおだてられ、いよいよ本気になる。

自分の店がなんとかやって行けているのは、目の届く範囲だからマシなサービスができるだけではないかとか、経費が安いからリーズナブルに出せているだけではないかとか、そんな当たり前のことが冷静に考えられなくなる。

偶然に恵まれた幸運を忘れ、馴染み客への感謝もおざなりに、己の実力と自惚れて、ついには目一杯の借り入れをして、高い家賃で銀座に店を出す。もちろん最初は祝いの客が駆けつける。挨拶などと称して、近くの同業の店を回っては杯をあげ、天下をとったつもりになる。

でも、それまで。少し気の利いた店などあちこちにあるから、もの珍しさの最初の客はすぐに引いてしまう。「毎週通うよ」などと言っていた客も開店祝いだけで、それっきり。

だけど、まだ気づかない。自分の腕なら、半年でなんとかなると信じ込む。そのうち、留守を任せていた本店が傾き始める。いよいよ焦りだすが、まだ未練があって、銀座の店じまいはしない。ついに資金に行き詰ってから初めて、そんな器ではなかったことに気づくも後の祭り・・・。

そもそも銀座というのは昔からの老舗があってこその街で、京都と同じく、新参者がのこのこやってきて「銀座でございます」などと言うものではない。それに、銀座が流行や高級の代名詞だったのは、ずいぶん昔の話で、もう時代は青山、表参道や六本木。

そんなことも分からず今日もまた、銀座に新参者がやってくる。調子に乗って看板にまで「銀座」と入れて。

・・・すみません、調子に乗ってしまいました。「オーク銀座レディースクリニック」、10月1日にオープンします。銀座二丁目の中央通りの交差点、カルティエが入る茶色いビルの7Fです。

ビル内ですので、もちろん入院ができないなどの制約はありますが、自家発電装置、クリーンルーム、医療ガス配管など安全対策の設備工事を行った上で、本院と同じ規模のラボラトリーを確保しました。

スタッフは数ヶ月前から大阪に仮住まいして技術研修センターでトレーニング、その後、本院での実務にも従事した上でオープンに備えています。また、当面は本院からスーパーバイザーが常駐いたします。

カルテもオンライン化されていますので、大阪の診療をそのまま引き継げます。特に、これまで関東以遠から大阪までお越しいただいていました患者さまにとって、多少とも便利になれば幸いに思います。ぜひとも銀座院を受診いただきますよう、よろしくお願い申し上げます。














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2016年9月5日月曜日

麻疹

理事長の中村嘉孝です。

先日から熱と咳で苦しんでいます。麻疹(はしか)が流行のきざしとのことで心配していたのですが、ただの夏風邪のようで安心しました。

恋愛など若いころに誰もが通り過ぎる経験をさして、「はしかのようなもの」という言い方があるくらいで、少し前までは麻疹はあまり大事には考えられていませんでした。実際、ほんの10年ほど前の日本で、麻疹の流行は普通にありました。

ところがワクチン対策が進んで流行が見られなくなり、昨年にはWHOが日本から麻疹は「排除状態」にあると認定。今や、ジャスティン・ビーバーのコンサートに麻疹患者がいた、ということが重大ニュースになるくらいで、変われば変わるものです。

感染症は人間の最も根源的な恐怖心を惹き起こします。当時の舛添厚労相がテレビカメラを前に大活躍された新型インフルエンザの大騒ぎを思い出しても、論理的な対応の難しさを痛感します。

歴史が作られる過程で疫病が果たした役割を考えると、感染症のコントロールが重要なのはよくわかるのですが、ジカ熱とか、学生時代には聞いたこともなかったウィルスが流行する様子をみると、もっとも原始的な生命体であるウィルスを人類が制圧しようするのは、途方もない試みのように思えます。

現在、まさにアウトブレイクしようとしている麻疹。ご存知のように、たいていの方ははしかのワクチンを打っているはずですが、残念ながら終生免疫というわけではありません。皮肉なことに、流行がないとウイルスに晒される機会がなくなり、なおさら免疫の持続効果が弱まります。妊娠中に発症すると流産、早産のリスクが高くなるとされています。皆さまも、くれぐれもお気をつけ下さい。

ところで、「はしかのようなもの」と麻疹にたとえられる恋愛。「年をとってかかるとそれだけ重い」と続きます。だた麻疹とは違い、免疫がつかず何度も繰り返しながら、ますます重症化が進む症例も多いようです。














2016年8月18日木曜日

不妊保険

理事長の中村嘉孝です。
保険って難しい感じがします。保険会社のパンフレットをみると、いろんなグラフとか書いてあって、よくわかりません。でも、保険数理の計算は複雑ですが、保険の本質はあまりに単純です。

生命保険なら早死にした時に困るだけの金額、医療や損害の保険なら、病気、事故で生じる費用を、年金なら長生きした時に困るだけ金額をカバーする。ただ、それだけのことです。
私は、死んでも銀行借入をチャラにできるように掛け捨ての生命保険に入ってます。一方で、あまり長生きするとは思わないので、年金は法定のものだけです。リスク・ヘッジが目的なのだから、事故なく無事でいれば掛け金は消えていく。その掛け金をプールして、事故にあった人の損害を補償する。わかりやすい話です。

しかし、現実には貯蓄型だとか配当型だとかいう保険がたくさんあります。生命保険なのに、何歳まで生きていたらと御祝い金が出るとか、よく考えたら意味不明なのですが、そこが人間心理の難しいところです。色々考えているうちに、掛け金が消えていくだけじゃ損した気持ちになるのでしょう。

さて、金融庁が解禁した不妊保険ですが、各社とも商品化には二の足を踏んでいるようです。高額になる体外受精の費用をカバーしようとしているのでしょうが、事前リスクの評価やモラルハザードを考えると、仕方のないことだと思います。
体外受精クリニックの中には、最初に一括して100万とか一定額を預かって、何回までの治療はすべて含むというやり方をしているところもあります。これも一種の保険ですね。

実は当院でも検討したことがあるのですが、ご存知の通り、年令や基礎疾患によって成績が大きく変わってきますので、公平とは言いがたい。また、治療の方針をそのクリニックが決めるわけですから、逆のモラル・ハザードが起こりえます。そんな理由で定額プランは見送りにして、むしろ、引き続き体外受精のコスト自体を引き下げる努力を続けることにしました。
とはいえ、保険の設計が絶対に無理というわけでもないと思うので、ぜひどこかの保険会社が不妊保険を実現して欲しいところです。





















2016年8月13日土曜日

生前退位

理事長の中村嘉孝です。

先日、天皇陛下の生前退位についてのお言葉がありました。しかし、私のような下々が論評するのも何なのですが、退位せずとも摂政を置けばすむだけのことのように思います。

陛下は「民主主義の下の皇室のあり方」というのを真に受けすぎなのでしょう。「国民とともに」ということで行幸にこだわっておられますが、実際のところ、雅子妃とか佳子さまとかが来られる方が喜ばれるでしょう。

服喪が与える影響についても語っておられますが、むしろ、かかる儀礼、式典こそが、皇室の最も重要な役割です。現代社会において非合理と思われる儀式を粛々と執り行う姿に、我々は畏怖し恭敬するのです。個人の存在を超越する力への跪拝。それは神話を誰も信じなくなった現代においてもなお、人間から消えることのない心性であり、あらゆる政体の礎なのだと思います。

むしろ、心に響いたのは冒頭の「社会の高齢化が進む中、天皇もまた高齢となった場合、どのような在り方が望ましいか」という問題意識です。残念ながら後に続くお言葉の中では深く掘り下げられていませんが、象徴としてのイメージこそが問題で、活力を失った社会を表象してしまうことを懸念しておられるように思います。

さて、ご存知の通り皇太子妃ご夫妻は不妊治療を受けられて、内親王を授かられました。女性天皇の議論もありましたが、現在の皇室は、少子高齢化、女性の社会参画など、まさに日本社会を象徴しているようです。

弊法人では生殖医療とともに介護事業も行っていますが、私自身、高齢者の尊厳を守りながらも活力を失わずに新しい世代へと新陳代謝していく社会であって欲しいと、常々、思っています。













2016年7月25日月曜日

幽霊

理事長の中村嘉孝です。

カルフォルニア大学が主催の体外受精のセミナーでサンディエゴに行っていました。

最新のトピックスがよく整理されているセミナーで、男性不妊、TESE(精巣内精子回収術)、PGS(着床前診断)などの話題がとても参考になりました。

ERA(子宮内膜着床能検査)のプレゼンテーションもありました。最近、ますますERAの重要性が認識されるようになってきているようで、プレゼンの後にはマイクの前に長蛇の列。質問の時間をたっぷり取っているセミナーだったのですが、唯一、時間切れになったプレゼンテーションでした。

卵巣刺激法については弊院が以前より提唱している通り、きちんと刺激した上で全胚凍結するのがやはり一番成績がよいという認識でした。もちろん排卵刺激はOHSS(過剰刺激症候群)の危険と隣り合わせですが、その周期で移植をせずに全ての胚を凍結することで危険を回避できます。

さて、会場はHotel Del Coronadoというホテルで、ビーチサイドにあるビクトリア様式の建築が目を引きます。ここが歴史ある名の通ったホテルだということを、部屋のパンフレットで見て初めて知りました。


確かに各界の著名人が宿泊したり、色々な映画のセットに使われたりしたようですが、なにより驚くのは、人妻との道ならぬ恋で王位を棄てた英国のエドワード8世が、シンプソン夫人と初めて出会ったのがこのホテルとのこと。また、幽霊が出ることでも有名らしく、こちらも道ならぬ恋の相手を待ち侘びる若き美貌の人妻の幽霊。

人妻幽霊との出会いを心待ちにしていたのですが、残念ながら私の部屋には来てくれませんでした。なんでも彼女が泊まったという部屋が一番人気らしく、彼女目当ての客で忙しいのでしょう。

せめてもの思い出に、彼女の名前のついたKate Morganというオリジナルのカクテルを飲んできました。ジンベースの柑橘のカクテルですが、亡霊をイメージさせる白い蒸気を作るために小さいドライアイスが入っていて、「十分にお気をつけてお飲み下さい」とのこと。

美味しいけれどやけどしそうな、危険と隣り合わせのカクテルでした。