2017年4月28日金曜日

子宮内膜着床能についての講演をしました

医師の田口早桐です。

4月22日土曜日ホテルモントレグラスミアにて講演会があり、講師を務めさせていただきました。【女性医師による不妊治療を語る会】で、私の演題は「子宮内膜着床能検査ERA(endometrial receptivity array)の現状と課題」でした。

その他典子エンジェルクリニックの舩越典子先生による「薄い子宮内膜による着床不全を改善する薬物療法」という講演と2演題。

小規模な会ながら、座長はあの、二段階胚移植を考案された後藤レディースクリニックの後藤栄先生。内膜の着床能を高めることが、なんといっても今一番のARTにおける課題。喧々諤々、議論が大いに盛り上がりました。

他の参加メンバーは当院からは船曳美也子先生、上本町レディースクリニックの橋本弘美先生、天神橋ゆかこレディースクリニックの頼裕佳子先生、ちかえレディースクリニックの田所千加枝先生と、大阪最強の女医さん達が集合しました。皆さん、オーク会と連携を取って、不妊治療に力を入れている先生方です。

後藤先生の考案された二段階胚胚移植法やsheet法で着床の窓が広がるという基礎研究データがあります。当院でも取り入れていますが、まだERAとの関係は明らかになっていません。今後の課題がいろいろ見えてきましたので、有意義な会でした。











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2017年3月22日水曜日

保護主義

理事長の中村嘉孝です。

先日、ローマで開かれていた”17th World Congress on Human Reproduction”という生殖医学の学会に出席してきました。

それと特には関係ないのですが、先ほど、欧州訪問中の安倍首相もローマに到着、ジェンティローニ伊首相と会談した、という報道がありました。両首相は5月にイタリアで開かれるサミットで、保護主義に対抗するメッセージを打ち出すことで合意したとのこと

EUでは英国の離脱、アメリカではトランプ大統領と、世界中でグローバル化への反動が見られます。長い視点で見ればグローバル化による国際分業が経済成長につながるはずですが、その途中で経済的に取り残されてしまう人が出てくるのは間違いありません。反発が出てくるのは当然の成り行きでしょう。

また、グローバル化の批判でよく出てくるのは、海外の税制を利用した企業や富裕層の課税回避。私の知人にも、税金のために海外に移住している資産家の方が何人もおられます。私はローカルな仕事をしていますし、逃げるほどの資産もないので相変わらず大阪の下町に暮らしています。ですので彼らと会うたびに、「金のために祖国をないがしろにするとはけしからん」と言っているのですが、正直なところ、もし私が彼らの立場だったとしたら同じことをするだろうな、と思います。しかし、このようなことはグローバル化によって起きる問題というより、むしろグローバル化が進み、国際的に税のルールが統一されれば解消されることです。

実は、生殖医療の分野でも似たような現象があります。ご存知のように、卵子・精子ドナー、代理母、着床前遺伝子検査(PGS/PSD)、同性カップルなど、規制は国ごとにまったく異なります。日本の学会の規制も特異ですが、EU内でさえ国ごとに規制はバラバラです。経済活動と違って倫理観が根拠になっているので、グローバル化して統一しようという機運にならないのですね。

結果どうなるかというと、本当に治療を必要としている人たちは、国境を超えて治療を受けに行くようになります。現実的に国境をまたげば何でもできるわけですし、すでに多数の方々がそうしいます。ですから、私は早々に規制を廃止していけばいいと思うのですが、そうならないですね。むしろ、規制は強化され、複雑化していく一方。

経済の保護主義もますます盛んになる気配ですが、所詮お金のためだけにさえ人は国境を越えるのですから、子どもを持つとういう遥かに重要な人生の選択を阻む規制があるのであれば、国境を越えて治療を受けることを、私は当然のことだと思っています。

さて、今回の出張はスリが多いイタリアなので、準備にスーツの下に貴重品を身に付けるものをAmazonで注文したところ、刑事ドラマに出てくるショルダーホルスターのようなものが届きました。どうなるかな、と思いつつ出掛けたのですが、帰りの空港のセキュリティで止められました。
ボディチェックのために両手両足を拡げたら、
「違う。両手を前に出して」
犬みたいに両手をそろえて前に出さされ、何をするのかと思うと指先を試験紙のようなもので丹念になでられました。そして、その紙を奥にある計測器らしき機械に入れて何やら調べている様子。それを何度か繰り返して放免されましたが、こんな奇妙な保安検査は初めてです。何事かと思って後で、ネットで調べたら、硝煙反応の検査でした。

国境を越えるのに下らない冗談をするものではないと、つくづく反省をした次第です。





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2017年3月1日水曜日

船曳先生が取材を受けました

事務部よりお知らせです。

船曳先生が「卵子凍結」について取材協力した、甘糟りり子さん著『産まなくても、産めなくても』(講談社)が発売されました。
甘糟りり子さんとの対談もwebで紹介されておりますので、ご覧くださいませ。
http://news.kodansha.co.jp/20170226_b01















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2017年1月5日木曜日

誕生日

理事長の中村嘉孝です。

「『100万分の1』の双子の赤ちゃん生まれる」、ネットでニュースを見ていると、こんな見出しが目に飛び込んできました。

「100万分の1の双子」って何ごとかと驚いて記事を読んだら、出生時間が1月1日の午前0時を跨いだ、という話でした。
まあ、計算したらそうなるんでしょうね。でも、本当は暦年を跨ぐより、学年を跨ぐ方が大変。日本だと、4月2日を跨いだら、一卵性双生児が別々の学年ってことになってしまいます。
双子でなくても、早生まれのことは皆さん不安に思われて、産婦人科をしていると、「出産を遅らせてもらえませんか?」という話はよくあります。もちろん、妊婦さんからのそういう話は笑って聞き流すだけですが、体外受精だと、凍結しておいた胚を移植する時期をいつにするかを真剣に相談することになります。
そういうと、そんな人工的なこと、と思われるかも知れませんが、かつては丙午の年の出生数が少なかったのです。私は丙午の翌年の生まれだったので、おかげで浪人の競合が少なく、大学受験では助かりました。
まあ、コンプライアンスが絶対の現在では考えられませんが、昔の産婦人科医からは、「頼まれて出生証明の日付を変えた」なんてことを聞きます。
たかが日付のことですけれど、それぞれにとっては大切な記念日。一所懸命になるのも当然でしょう。
この双子のご両親は「誕生日は別々にお祝いするつもり」とのことで、考えただけで楽しそうですね。










2016年12月23日金曜日

人工知能

理事長の中村嘉孝です。

オーク会では体外受精のプロセスを、すべて情報システムで管理しています。週一回のシステム開発会議で現場からフィードバックを受けながら、このシステムは社内のIT部門によって自社開発されています。

凍結胚についても、当然、システム上で個別に登録されており、分割プロセスの顕微鏡画像やグレードなど履歴が一目で判るようになっています。
さらに、それらの履歴情報を数値化しており、アルゴリズムに基づいてどの胚を優先的に移植すべきかシステムに自動的に表示されるようにしています。最近、人工知能の話題をよく目にしますが、大げさにいえば、この移植胚優先順位付けシステムも一種の人工知能。

もちろん定型化できない情報もありますから、メモとして残されていることも含めて総合的に人間が判断することにはなるのですが、その補助として非常に役立っています。
新しい技術を取り込みながらシステムを常にバージョンアップしていますので、人工知能の技術が発達すれば、より高度なサポートができるようになるのではないかと期待しているところです。

最近、『人工知能のための哲学塾』という本を読みました。著者の三宅陽一郎という方はゲームの人工知能を開発しているそうですが、工学と哲学の交錯する議論を紹介しています。

本当に機械が人間と同じように思考ができるようになるのか私にはわかりませんが、小説や映画では思考を獲得したコンピュータシステムが、いつの間にか人間に取って代わって世界を支配する、という筋書きがよくあります。
このような懸念は昔からのことで、1950年にSF作家のアシモフが著した「ロボットの三原則」が有名です。

「人に危害を加えてはならない」から始まる原則ですが、幸い現在のところまでそのような心配もなく、一方で技術の発展によって日常生活も随分と便利になっています。
しかし、店頭で質問に答えるロボットやiPhoneのSiriの受け答えを見ていると、確かに、空恐ろしく感じるときもあります。

先ほどの本によると、お掃除ロボットのルンバもサブサンプション・アーキテクチャー(Subsumption Architecture) とかいう人工知能の技術を使っているとのことで、驚きました。

念のため、今、自宅のルンバにアシモフの三原則を言い聞かせているところです。


























2016年12月5日月曜日

大人のファンタジー

理事長の中村嘉孝です。

先日、ニューヨークで生殖医学関係のセミナーがあり、参加してきました。着床前診断で染色体異常があっても、不思議なことに、そのまま胚移植したら結構な割合で元気な子どもが生まれます。受精卵が細胞分裂を繰り返して胎児になるわけですが、最初のころの細胞分裂ではエラーが起こりやすく、染色体異常の細胞が混じる。つまり着床前の胚は、正常と異常の細胞がモザイク状になっているわけです。そして、異常の細胞が淘汰されていって、やがてモザイクからすべて正常に変わっていきます。だから着床前診断に取ってきた細胞が異常でも、生まれてくる子どもには何もないのですね。

セミナーでは、モザイクがどのようにして起こり、どの部分から淘汰され、いつ頃までに正常に戻っていくのかを蛍光染色ではっきりと示した画期的な研究成果のプレゼンテーションがありました。もちろんモザイクが多いこと自体は数年前から知られていたのですが、少しでも正常でなければ胚移植すべきではない、という考えが支配的でした。メカニズムがわかり、モザイクだからよくない訳ではない、と言い切れるのに随分と時間がかかりました。









プレゼンテーションをしたのは女性の研究者でした。自分自身がモザイクの胚で妊娠した方で、最後のスライドは、元気な男の子の現在の姿でした。

街ではクリスマスの準備が始まっていましたが、ニューヨークを舞台にしたクリスマスの映画は数多くありますが、中でも『34丁目の奇跡』はよく知られた作品です。

「サンタはいない」と娘に教えているシングル・マザーの前に、「自分はサンタ」という老人が現れる。老人に徐々に心を開いていく娘。しかし、老人は精神病院に入れられる。老人を救い出そうと、彼女に思いを寄せている弁護士の助けを借りて「サンタは実在するか」を争う前代未聞の裁判が始まる・・・。

「本当はサンタがいる」というストーリーは、どうしても子ども向けの映画になりがちですが、恋愛もからめた上質な大人のファンタジーに仕上がっています。

帰りのJFK空港の保安検査場にも、サンタクロースがいました。フィンランドに帰るところなのでしょうか、驚く周囲の客に、少し早いクリスマスの祝福をしていました。その光景をみているセキュリティのスタッフたちも微笑んで

・・・というわけはなく、激怒していました。

「この忙しいのに、しょうもないことしやがって」
トランシーバーで3人ほど追加のセキュリティ・スタッフが呼ばれ、厳重に検査が行われていました。裸になってやっと検査を通ったサンタクロースは、上機嫌で後ろを振り向いて手を振りながら、ゲートに向かって去って行きました。










大人のファンタジーって、なかなか難しいですね。日本へ向かう飛行機が動き出した、ちょうどその時、窓の外に雪が舞い始めました。今年の初雪だったようです。




















2016年11月28日月曜日

インタビュー

医師の田口早桐です。

11月24日木曜日、銀座院で健康情報サイトFYTTEさんの取材を受けました。FYTTEといえば、1989年、フィットネスブームのさなかに創刊された、ダイエットや健康に関する記事のみで構成された雑誌で、私も時々買って読んでいました。それが今年の3月に休刊になり、現在はオンライン版のみとのこと。時代とはいえ、少し寂しいですね。

取材の内容は、妊活についてですが、詳細は楽しみにしておいていただくとして、当日の東京は、雪。11月の雪は54年振りとのことでしたが、取材を終えた帰り、あまりに寒く、手がかじかんで仕方ないので、思わず有楽町駅前の丸井でワゴンセールをしていた手袋を購入。ホッとしながら建物を出たところで、テレビクルーにマイクを向けられました。

「めざましテレビです。紅白の出場者のリストが今日発表になりましたが、このリストを見て、どう思われますか?」

うーん。さっきまでの不妊や妊活に関しての質問ならすらすら答えていた私ですが、これにコメントするのは、とっても難しい。とっさに出たのが、「大竹しのぶさんが、出場ですか・・・、何を歌うんだろう。」

我ながらイケてないコメントだなあ、と落ち込み、多分ボツだろう、と思いながら、それでも翌日しっかり録画して、チェックしてしまいました。


はい、一応採用されていました。良かった。