2014年10月28日火曜日

着床の窓 (ERA着床能検査)

医師の田口早桐です。

体外受精における反復着床不成功、つまり比較的良好な胚を何度か移植しているにもかかわらず妊娠に至らない場合が一番悩ましいケースです。
反復着床障害の原因としては、子宮内膜症、子宮筋腫、内膜ポリープ、卵管水腫などがありますが、それらを全て確認した上で尚着床しない場合もあります。

その場合はやはり内膜に原因があると考えるのが自然の流れです。内膜の着床状態を知る方法として、慢性炎症の有無を調べることも重要ですが、ERA(子宮内膜受容能アレイ)で、その人にとって内膜が着床に最適な状態になるのはいつかを知っておいたほうがいいかもしれません。

我々は「着床の窓(implantation window)」と呼んでいます。子宮内膜が、胚が着床できる状態になったとき、「着床の窓が開いている」といいます。例えは良くないですが、パチンコでもチューリップが開いてこそ、玉が入るのですよね。着床の窓が開く時期を予測して、各々に合った時期に移植する(個別化する)ことで、着床率を上げる工夫ができます。

今はERA検査をすれば、子宮内膜の遺伝子発現により、「着床の窓が開いている」かどうかを検査することができます。私自身はとても有効な検査だと考えています。というのも、以前から、良好形態胚盤胞を何度か移植しても着床しないのに、駄目もとで返した発育の遅い胚で着床して妊娠した、という例をときどき見るからです。これらのことも「着床の窓」が人により後ろにずれている、ということを考えると納得できます。

良好胚を移植しているのに何度も着床しないというのは、本当に歯がゆい状態です。現在当院でもこの検査を始めたばかりで、今数人の方が結果待ちの状態です。現時点で着床しない状態が続き、他に思い当たる原因がなくて打つ手がない場合は、やってみる価値があると思います。
















2014年10月15日水曜日

アップル、フェイスブック で、卵子凍結が保険適応に!

医師の船曳美也子です。

10月15日のCNNニュースによると、超有名IT企業のFacebookとAppleが、
女性従業員の卵子凍結を医療保険の適応対象とする方針を決めた、とのことです。


フェイスブックの保険では、すでに今年の1月から卵子凍結を含む妊娠医療が
最大2万ドル(約214万円)カバーされており、アップルも来年1月から適用を開始
する予定だそうです。

記事によると、「卵子凍結の費用は1サイクルにすくなくとも1万ドル(日本円で約100万円)、
保存に年間500ドル以上。医師からは20個以上の卵子を保存するように勧められるので、
凍結を2サイクル実施する場合が多い。」

となっており、費用以外は、当院と同様の説明がされているようです。

フェイスブックのCOOであるシェリル・サンドバーグは、著書「LEAN IN(リーン・イン)」の中で、
妊娠出産については前もってブレーキをふまないこと、なるようになるから、といっておられ
ます。が、卵子の妊孕性についてはそうはいかないよ、という気持ちで、拙著「女性の
人生ゲームで勝つ方法」では、「アクセルを踏み続けて。もちろん、ナビは確かめてから」と
記させていただきました。しかし、フェイスブックが、企業の先陣を切って卵子凍結に
保険適応をされていたとは!

アベノミクスの成長戦略の柱に女性登用がありますが、女性達が妊孕性を心配して仕事を
躊躇することがないように、こういった技術活用について、日本の企業も是非参考にして
いただきたいと思います。また、女性達には、自衛策があることを知ってほしいと切に思って
います。

2014年10月6日月曜日

足元

理事長の中村嘉孝です。

先月末にリスボンであった、エピジェネティクスと生殖についてのセミナーを聴きに行っていました。
最初はエールフランスで行く予定だったのが、ストライキのために直前になって他社に変更。足元
を見られたのか、高くつく羽目に。ストのニュースは知っていたのですが、もっと注意して早くに対応
しておくべきでした。

エピジェネティクスとは聞きなれない言葉かと思います。遺伝子が人をつくる設計図だというのは
ご存知かと思いますが、最近わかってきたのは、人間は必ずしも遺伝子通りの運命というわけではなく、遺伝子の発現はエピジェネティクスという機構によって制御されているということです。同じ
遺伝子をもつ一卵性の双子であっても、性格などに違いが出てくるのはそのためなのです。

そして、そんなことが生殖医療とどう関係があるのかというと、精子や卵子の元になる細胞ができ
る段階と受精して胚ができる段階で、エピジェネティクスの情報の一部が消去され、再プログラミン
グされることがわかっているのです。ですから、培養環境がエピジェネティクスにどのような影響を
与えるのか、体外受精の分野でも研究が進んできています。

話は変わりますが、先日、一卵性双生児の姉妹を紹介されました。顔も話し方もそっくりで区別が
つかないのですが、身長がまるで違っていました。後で紹介してくれた女性に
「おそらくエピジェネティクスだね」
とセミナーで聴いてきた知識を得意になって説明しようとしたら、
「いや、ヒールの高さが違うだけと思うけど・・・」

もっと、足元には注意しなくてはいけません。















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2014年9月24日水曜日

ランチブレイクに受精能チェック

検査部のケイトです。

私は懐かしい気持ちと母国でどのようなことが起こっているのかを知りたくてイギリスの
新聞を読んでいるのですが、こんな記事を見つけました。

“Busy City Workers to be offered £200 fertility ‘MoT‘ that’s designed to be done in a lunch break.” Daily Mail by Emine Sinmaz. August 2014.

なんていい考えなのでしょう。MoTとはすべてのことが機能しているか確認するために
テストしたりチェックしたりすることです。今月末に開業したロンドンのクリニックでは
男性も女性もたった一時間で次のようなテストを受けることができるそうです。女性は
3D超音波と血液を使ってテストされ、男性は精子の詳しい情報を知ることができるそう
です。ヨーロッパで最も大きなクリニックを開業したクリニックの院長は女性や男性の
受精能力は一時間でテストできるといっています。特定の条件ではこのように簡単には
できない場合もありますが、これがいいスタートになる人もいるのではないでしょうか。
クリニックでは体外受精を勧めますが、患者は自然周期や低刺激のIVFはお薬を使った
刺激周期の場合に比べて成功率が低いことや、持病があったり37歳以上の女性は体外受精
をお勧めしないことも理解しておく必要があります。

このクリニックは他院よりもより安い治療や、忙しく働く人のためにより便利な検査を
提供するよう試みています。たとえまだ家族を持つことが先の話だったとしても、多くの
人が自分の受精能力を知ることに興味があると思います。あなたが妊活をしている、して
いないにかかわらず、ランチブレイクに基礎的な受精能をチェックするのはいい考えだと
思いませんか?

MoT:毎年行われる車の安全と排気ガスの検査(車検)

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I was reading my English newspaper feeling nostalgic and wanted to know how things were in the UK. I came across this article.

“Busy City Workers to be offered £200 fertility ‘MoT‘ that’s designed to be done in a lunch break.” Daily Mail by Emine Sinmaz. August 2014.

What a great idea! MoT means a test or check to make sure everything is working. The London clinic opens later this month and will test men and women in just one hour. The women will be tested using 3D ultrasound and blood tests, the men will have a detailed semen analysis. The clinics professor who founded what is now the largest IVF clinic in Europe, says that the woman or man’s fertility potential can be tested in an hour. However, certain conditions can not be checked like this but it’s a good starting point for some people. The clinic will offer conventional IVF but patients have to understand the success rate is much lower when natural cycles are used or mild IVF compared to using drugs, women who have complications or are over 37 years old would not be recommended conventional due to this.

The clinic tries to offer treatment at lower prices than other clinics and make check-ups more convenient for busy workers. Many people are interested to know their fertility potential, even though they are not planning a family yet. Whether you are trying to conceive or not, wouldn’t it be great to have a basic fertility check in your lunch break!

Note-MoT means a Ministry of Transport check of a car that’s done every year.











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2014年9月12日金曜日

不妊治療を受けられた患者様からの感謝の声・・・その1

オーク会事務部です。

オーク会で不妊治療を受けられた患者様からいただいたサンキューレターをご紹介させていただきます。

■ M様
本当にありがとうございました。辛い治療も、自己注射も、どれもこれも耐えることができたのは、
子どもを授かるためと励ましてくださった、スタッフの皆さんのおかげです。ようやく妊娠でき、
本当にうれしいです。採卵のときには看護師さんが明るく優しく接してくださり、本当に心強かった
です。本当に、本当に、ありがとうございました。無事元気な子を出産できるようにがんばります。
これからもたくさんの方が妊娠できるように応援しています。

■ Y様
私は無事女の子を出産し、娘は健康で順調に育っております。
田口先生がテレビに出演されているのを見て、先生が書かれた本を読み、この先生となら前向きに頑張れると思ってオーク住吉産婦人科に通うことに決めました。
不妊治療は精神面との戦いですが、何度も先生の本を読み返し、ポジティブに考えられるようになりました。先生との出会いがなければ今も不妊に悩んでいたかもしれません。我が子を抱くことができ、本当に感謝しております。今もご多忙の日々をお過ごしかと思いますが、これからも皆さんの救世主として頑張ってください。











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2014年9月9日火曜日

第32回武庫川産婦人科セミナーで発表しました

医師の田口早桐です。

凍結融解胚移植におけるプレマリンとエストロジェルの比較研究について先週7日土曜日に、
武庫川産婦人科セミナーで、発表させていただきました。

武庫川産婦人科セミナーは、私の古巣、兵庫医科大学産婦人科教室の先輩先生方がたくさん
出席されるので、いつも楽しみにしています。

発表内容は、ホルモン補充周期を利用した融解胚移植において、エストロゲン製剤の選択を
どのようにするとよいのか、ということに関してですが、いくつか貴重な指摘もいただき、有難
かったです。

さらにこの内容を深めていきます。












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2014年8月26日火曜日

“Pecha Kucha in Osaka” でプレゼンしました

検査部のケイトです。

“Pecha Kucha in Osaka” に招待されてプレゼンしてきました。

私の仕事と趣味を組み合わせて”art and ART”というプレゼンをすることにしました。私は休日に絵を描くことが好きでそのほとんどが日本に関する絵を描いています。鉛筆で書いたロボット芸者を特集した展示会を大阪で開催したこともあります。今まで気づかなかったのですが、私のすべての絵には女性と球体が描かれていて、潜在意識として卵をイメージしていたのかもしれません。

もう一つのARTとして、生殖補助医療において現在使われている顕微授精やRescue IVM, TESE(精巣精子採取術)や凍結保存などのIVF治療についても話させていただきました。会場には日本人のほか香港、オーストラリアなどのいろいろな国の人がいて、英語でスピーチさせていただきました。

プレゼン後は多くの質問を受け、たくさんの女性が将来のために卵子を凍結に興味を持ってくださり、英語が通じる病院を探していたという方もいらっしゃいました。興味深かったのは、男性を含めた多くの方が女性は生まれる時にすでに卵子の数が決まっていてそれがなくなるまで徐々に減っていくという事実を知らなかったことです。一般に女性の晩婚化が進んでいますが、女性はこの事実を考えなければなりません。

ぺちゃくちゃARTの可能性につて楽しく話させていただきました。参加してくださった方、ありがとうごいました。

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I was invited to do a small presentation at Pecha Kucha in Osaka. I decided to combine both my job and my hobby, so I called the presentation art and ART. I enjoy drawing in my free time and most of my artwork is inspired by Japan. I did two exhibitions in Osaka featuring my Robot Geisha drawings in pencil. I didn’t realize until now that all my drawings are of women and have many spheres in them, maybe they are oocytes subconsciously!

 I talked about the other ART in my life, Assisted Reproductive Technology and explained about IVF treatments that are available today including ICSI, Rescue IVM, TESE and cryopreservation. My audience was a multitude of nationalities; Japanese, Hong Kongese, Australian and so on, so my speech was in English. 

After my presentation I was asked many questions, many women were very interested in freezing their oocytes for future use and other people wanted to attend an English speaking clinic. One interesting point for me, was that many people including men did not know that a woman is born with a genetically predetermined number of eggs and that they decrease over time until there are none, so women have to consider this factor, although women are generally getting married later on in life. 

I enjoyed Pecha Kucha and talking about all the possibilities of ART. Thanks to everyone who attended.











2014年8月22日金曜日

病気治療のための卵子凍結

医師の田口早桐です。

論文紹介のブログでもご紹介しましたが、何らかの病気で治療が必要で、将来の妊娠への影響が心配な場合に卵子や受精卵の凍結が望ましいのは明らかです。以前に比べて卵子凍結はよく行われるようになってきました。パートナーがいないなどの社会的理由で凍結する場合は、本人が納得希望した上で凍結するわけですから、迷いは少ないです。しかし前述のように病気で凍結する場合は、病気を宣言されて不安になり、治療のことですっかり気が重くなっている上に、さらに卵子凍結の選択を迫られる、という、大変精神的にキツい状況に追い込まれます。病気が乳がんだったりすると、卵子凍結の際に排卵誘発で使用する薬剤なども不安材料になります。治療開始までの間に卵子凍結を、などと急かされるとなると、もう何も考えられない状態になります。

当院でも乳がん治療施設から、治療開始までに期間が限られているものの、治療後の妊娠のことを考えると卵子を凍結することが望ましいという理由で、患者さまが紹介されて来られます。当院は不妊治療クリニックで、凍結は日常的に行っていることではありますが、不妊治療とはまた別の問題を抱えて来られる方には初めから説明が必要になります。不妊治療を続けていて、「そろそろ体外受精かも」と思っている方は心の準備ができていますが、そうでない方にとっては、大変ハードルの高いものではあります。


特に患者さんが若年の場合には、さらに、決断に勇気がいるようです。この話をしていたら、当院の培養室にいるKateが、自分がイギリスの不妊クリニックで勤務していた頃の話しをしてくれました。彼女は主に精子を扱っていましたが、病気で精液を凍結する場合でも、若年者だと、非常に決断が鈍かったとのことです。精液は卵子に比べて準備も必要でなく、痛みもなく採取できるのに、なぜ?と思うかもしれませんが、良く考えたら20未満の男性にとって、将来の妊娠云々といってもすぐにピンと来ないのかもしれません。ましてや、卵子凍結となると、ものすごく決断にエネルギーがいることでしょう。今後もそのような患者さんの気持ちをきちんと汲みながら、治療にあたっていきたいものです。

















2014年8月19日火曜日

マレフィセント

理事長の中村嘉孝です。

最近、『眠れる森の美女』を下敷きにした、アンジェリーナ・ジョリー主演のディズニー映画を見ました。以下、ネタばれですので、ご注意を。

妖精の国で生まれ育ったマレフィセントは、ある日、人間の少年ステファンと出会い恋に落ちます。ステファンは16の誕生日に「真実の愛のキス」をプレゼントするのですが、その後、妖精の国と人間の国の争いの中で、ステファンはマレフィセントを欺いて手柄を立て王女と結婚、自ら王の座を手にします。

そして、オーロラ姫が生まれるのですが、招かれざる祝いの席に出向いたマレフィセントは、
16歳の誕生日の前、糸車の針に刺され、永遠の眠りにつく。ただ『真実の愛のキス』だけがこれを解く」との呪いをかけます。

恐れをなした王は、マレフィセントにバレているとも知らず、赤ん坊を森の奥に匿います。最初は憎しみに満ちていたマレフィセントも、素直に成長するオーロラと共に過ごすにつれて愛情が芽生え、呪いをかけたことを激しく悔やむようになります。しかし、マレフィセント自身にも自らかけた呪いを解く方法はありません。

16歳の誕生日を前に呪いの通り、オーロラは糸車の針に刺されて永遠の眠りについてしまいます。「真実の愛のキス」をしたら呪いが解けるはずなのですが、「真実の愛」などこの世に存在しないことを分かっていたからこそ、マレフィセントはそう呪ったのです。旅の途中にオーロラに一目惚れした王子がキスをしたものの、グリム童話と違って何も起こりません。

しかし、それを見たマレフィセントが慟哭し、オーロラが目覚めるまで自分が守り抜くことを誓ってその額にキスをした途端、呪いが解けます。そして、王に追い詰められて絶対絶命となったマレフィセントをオーロラが救い、二人は仲良く森で暮らします。

正直、あまり期待していなかったのですが、本当に面白い映画でした。善悪の区別が単純でないこと。男女の愛ではなく、親から子への愛こそが真実であること。そして、それが遺伝学上の親ではなく、育ての親にあること。子供も見るディズニーの映画ですら、この程度の主題は扱えます。どうして生殖医療技術をめぐる議論は、「知る権利」だとか、つまらないことにこだわり続けているのでしょうか。











2014年8月15日金曜日

大岡裁き

理事長の中村嘉孝です。

ローマの病院で、取り違えた胚で双子が生まれ、出産した夫婦と双子の遺伝上の両親との間で親権をめぐり法廷論争となっている話。

これは、代理出産した子どもの引き渡しを拒否した「ベビーM事件よりも、もっと本質的な議論になると思います。

一審では、「すでに親子関係ができている」との理由で、出産した夫婦に親権を認めたとのこと。共同通信によると、裁判所は「医学の進歩などで新たな妊娠の選択肢が生まれ、遺伝的、生物的な家族のつながりから形態が変わりつつある」と指摘したそうですが、まったくその通りかと思います。

法律は所詮、後追いのものに過ぎませんから、新しい技術が使われ、失敗を重ねながらも道を拓いていくしか仕方ありません。その中で、法技術論的な決着が付けられていくしかないと思います。

さて、大岡裁きに有名な「子争い」という話があります。互いに自分の子だと言い張る二人の女に、
子の腕を両側から引っ張って勝った方を母とする」と言い渡す。二人は力いっぱい引き始めたが、子どもが痛がって泣き始めたとたん、一方の女が思わず手を放してしまう。勝った女が子どもを連れて行こうとすると、大岡越前守はそれを制し、「真の親なら、まず子を思う。痛がって離した方が本当の親である」。

今後の法廷でどのような結論となるかわかりませんが、子どもが幸せに育つことを心から祈っています。



2014年8月14日木曜日

Beauty&CO.に船曳ドクターの記事が掲載されています

事務部よりお知らせです。

船曳美也子ドクターが、資生堂 美の応援サイト「Beauty&Co.」に記事を書いていますので
ぜひご覧ください。

「オンナは子宮で恋をする!?幸せを呼ぶ恋愛ホルモンの作り方」
http://www.beauty-co.jp/feature/press/BP003667/index.html















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子沢山

理事長の中村嘉孝です。

タイで9人の子どもを代理出産させていた日本人男性の話。私の正直な感想を言うと、「ご立派」。
ネットでの噂では、光通信の御曹司だそうですが、甲斐性のある男がたくさん愛人をつくって、
あちこちに子どもをつくるのは、別に珍しい話ではありません。

それが代理出産というだけのことで、タイに9人の愛人がいて、それぞれに子どもができたということ
となら、咎めることもないでしょう。よく知りませんが、あるいは全てその部屋にいたという日本人女性
の卵子なのかも知れませんが、そうなると、それは単に子沢山というだけで、少子化時代に、
ありがたい話かと思います。

チンギス・ハンは、一説によると数千人の子どもをつくったといいます。オックスフォード大学での
染色体解析の研究によれば、現在、1600万人のチンギス・ハンの子孫がいるとのこと。今回の
事件の男性も、スケールの大きな事業家の血を引く方ですから、一人の日本人女性というだけでは
なく、世界中の女性と沢山の子どもを残せばよかろうかと思います。まあ、余計なお世話ではありますが・・・。

世界的ミュージシャンやハリウッド・スターが代理出産で子どもをもうけ、次々と養子をもらって
大家族をつくったりすることについてマスコミが何の批判もしないのは、世論が論理的でないことを、
よく知っているからでしょう。大衆にとって、スターは禁忌の領域を超える存在です。
しかし、ハリウッド・スターがしてよくて、我々がしていけない論理的な理由などありません。敢えて
いうなら、スターにはそれだけの経済力があるということだけでしょう。

ただ、今回の事件について一点だけ非難を申し上げるなら、男性がプライベート・ジェットで
逃げた、というところです。万一、タイの拘置所に入れられることを心配したのかも知れませんが、
それだけの甲斐性のある方なのだから、逃げ隠れせずに、堂々としていて欲しいと思いました。

愛着

理事長の中村嘉孝です。

生殖医療が社会的議論を呼ぶ事件が相次いで報道されています。一つはオーストラリア人の
カップルがタイで代理出産を依頼したけれど、産まれた双子のうち一人がダウン症で、引き取られ
なかったという話。

しかし、障害を持った子どもへの育児放棄は自然の出産でもありうる話でしょう。最近、ライオンの
母子を描いたドキュメンタリーを見ましたが、その中でも大怪我を負って半身が動かなくなった
子どもを長く見守っていた母ライオンが、ついには見捨ててしまう姿が描かれていました。もちろん、
現在の人間社会で許される話ではなく、たとえ親が放棄しても社会全体が責任をもって育ていく
べきものです。でも、障害児を引き取ろうとしない親がいる事自体については、取り立てて言うほどの
ことではないと思います。

ただ、代理出産について本質的だと思われる点もあります。私も産婦人科医として数多くの出産に
立ち会ってきましたが、一番、思っているのは「母は強し」ということです。いくら超音波の出生前
診断が進歩しているとはいえ、生まれてくるまで障害がわからなかったということはいくらでもあります。心待ちにしていたご家族に、一目でわかる奇形をもった赤ちゃんをお見せすると、それまでの
祝福ムードが一気に暗転、子どもを見たご主人が卒倒してしまうケースもありました。

しかし、いつも驚くのは産んだ母の姿です。どんな大きな奇形を抱えていても、生まれた子どもが
可愛くて仕方ない。全く平気で胸元に抱き寄せて、飽きずにずっと眺めています。これを「出産に
ともなって出されるホルモンが愛着を高めるからだ」と生物学的に説明することもできるでしょうが、
その姿を目の当たりにすると、やはり、絶対的な愛の力強さに心打たれます。

今回の報道でも、むしろ代理出産したタイ人女性が子どもを離さないという話もあります。
オーストラリア人カップルの詭弁だと報道されていますが、必ずしもありえないことではないと、私は
思っています。

他にも、同じタイで9人の子どもを代理出産させていた日本人の話、イタリアで胚移植の取り違えの
話がありますが、長くなりましたので、また、改めて。