2016年7月25日月曜日

幽霊

理事長の中村嘉孝です。

カルフォルニア大学が主催の体外受精のセミナーでサンディエゴに行っていました。

最新のトピックスがよく整理されているセミナーで、男性不妊、TESE(精巣内精子回収術)、PGS(着床前診断)などの話題がとても参考になりました。

ERA(子宮内膜着床能検査)のプレゼンテーションもありました。最近、ますますERAの重要性が認識されるようになってきているようで、プレゼンの後にはマイクの前に長蛇の列。質問の時間をたっぷり取っているセミナーだったのですが、唯一、時間切れになったプレゼンテーションでした。

卵巣刺激法については弊院が以前より提唱している通り、きちんと刺激した上で全胚凍結するのがやはり一番成績がよいという認識でした。もちろん排卵刺激はOHSS(過剰刺激症候群)の危険と隣り合わせですが、その周期で移植をせずに全ての胚を凍結することで危険を回避できます。

さて、会場はHotel Del Coronadoというホテルで、ビーチサイドにあるビクトリア様式の建築が目を引きます。ここが歴史ある名の通ったホテルだということを、部屋のパンフレットで見て初めて知りました。


確かに各界の著名人が宿泊したり、色々な映画のセットに使われたりしたようですが、なにより驚くのは、人妻との道ならぬ恋で王位を棄てた英国のエドワード8世が、シンプソン夫人と初めて出会ったのがこのホテルとのこと。また、幽霊が出ることでも有名らしく、こちらも道ならぬ恋の相手を待ち侘びる若き美貌の人妻の幽霊。

人妻幽霊との出会いを心待ちにしていたのですが、残念ながら私の部屋には来てくれませんでした。なんでも彼女が泊まったという部屋が一番人気らしく、彼女目当ての客で忙しいのでしょう。

せめてもの思い出に、彼女の名前のついたKate Morganというオリジナルのカクテルを飲んできました。ジンベースの柑橘のカクテルですが、亡霊をイメージさせる白い蒸気を作るために小さいドライアイスが入っていて、「十分にお気をつけてお飲み下さい」とのこと。

美味しいけれどやけどしそうな、危険と隣り合わせのカクテルでした。



































2016年7月6日水曜日

ERAのRCT(ランダム化臨床試験)についてのご案内

理事長の中村嘉孝です。

スマホが壊れて携帯ショップに行くと、「お得なキャンペーン」の話を必ず聞かされます。でも、話がややこし過ぎて、本当にお得になるのかどうかよくわかりません。

その上、パンフレットに「MNP」とか「アドバンスオプション」とか、横文字がたくさん書いてあると、なんだか巧く言いくるめられているのではないかという気がしてきます。

実際、「目先の費用が安くても長期間解約できないプランで困った」、なんて話も聞くので、「ほんとにお得ですから」とか言われれば言われるほど、あやしく思えてきます。

さて、当院では現在、ERA検査の有効性を検証する臨床試験を準備しています。ERAはスペインのIgenomix社が開発し、提供しているサービスで、子宮内膜のmRNAを解析して着床に適切な時期を調べる検査です。

世界の医療機関が参加する大規模トライアルとして行います。先日は、Igenomix社の担当者が来訪され、弊院のスタッフと会議を行いました

内容を簡単にいうと、参加していただける患者さまを、ERAを受けるグループとERAを受けないグループの二つにランダムに分け、妊娠率がどれくらいよくなるのかを調べます。

ERAは検体をスペインまで送らなければならないこともあり、もともと16万5千円する検査ですが、今回の臨床試験ではERAを受けるグループに無償で提供されます。これは、たいへんお得です。

受けないグループに割付られてしまった方は「運が悪かった」と言ってしまえばそれまでなのですが、少々気の毒に思います。そこでIgenomix社に粘り強く交渉したところ、受けないグループの方にも「臨床試験が終わってから一回無償でサービスします」、との回答を貰いました。

ですので、ほんとのほんとにお得な臨床試験なのです。もちろん参加できる医学的基準がありますし、もっと詳しい説明が必要ですから、ご興味をお持ちいただける方は、スタッフにお尋ね下さい。

現在、ヘルシンキで開かれているESHRE(欧州ヒト生殖医学会)に田口、船曳の両医師が出張しており、現地で、研究責任者であるSimon教授と詳細の詰めをしているはずで

ぜひ、この機会に参加をご検討いただきますようお願い申し上げます。


















2016年7月5日火曜日

紅房子

理事長の中村嘉孝です。

中国で、凍結した卵子を使い45才で妊娠したというニュースがありました。仕事に専念するために、ということで18年前に凍結していたそうです。

18年前といえば、当時勤めていた病院で卵子を凍結しようとして、ストップがかかったことを思い出しました。採卵したけど精子がとれなかったという半ば医学的な理由だったのですが、日本産科婦人科学会がダメだと言っているからダメ、ということでした。

日産婦学会は現在も、「社会的な理由での卵子凍結を推奨しない」と言っていますが、一学会が「見解」などという責任の所在のはっきりしない形で事実上の拘束力を持つの
はいかがなものでしょうか。

それにしても中国の科学技術の進歩は早いですね。特に医療の分野では倫理審査などスキップして次々と進んでいくからでしょう。

遺伝子検査で有名なBGI(Beijing Genomics Institute)という会社があります。深センにあるのに、なぜBeijing?、というのは放っておいて、世界的にみて最高水準の技術を持っている会社です。着床前診断や出生前診断の学会でもよく発表を見かけます。

何も野放図にしろというわけでもないのですが、欧米の大学の研究者が「自国では規制があってできないから」という理由でBGIと共同研究しているのを見ると、現状の規制は行き過ぎなのだと思います。

しかし、商業資本による自由な研究活動が、むしろ共産主義国家で起きているのは面白い現象です。

不思議なのは、これだけ技術水準が高いはずの中国なのに、なぜか日本に治療を受けに来る方が多いこと。弊院にもたくさん来られますし、何を隠そう、中国の医療ツーリズムの会社からもよく提携の引き合いがあります

以前、「中国人観光客が自国でも売っているはずの家電を日本で爆買いするのは偽物をつかまされないから」と聞き、納得したことがあります。このような場合は、むしろ、規制によって、より自由な経済活動を促すことになりますね。

ところで報道によると、女性が卵子を凍結したのは、上海の『紅房子婦産科医院』というところだそうです。「紅房子」とはどういうことか気になってこの病院の英語のサイトを見ると、”RED HOUSE”とありました。写真を見ると確かに赤い建物ですが、別に共産主義だからというわけでもなさそうです。

まったく関係ないですが、心斎橋の周防町に『紅虎餃子房』という中華の店があり、ミナミで飲んだ帰りに、よく行ってしまいます。夜中には絶対に食べないと誓っていても、酔っ払ってしまうと坦々麺+餃子セットとか・・・。

こちらの方はもっと厳格な自主規制が必要かと、いつも痛感しているところです。










追記:記事をよく見たら凍結受精卵=凍結胚の話でした。
27才の時に凍結して45才で出産。同じパートナーのものかはよく分かりませんが、技術的には大した話ではありませんでした。
大変、失礼をいたしました。