2018年1月16日火曜日

検査の精度(その2)

理事長の中村嘉孝です。

前回の記事の続きです。

仮に検体を取り違えて、全く別の人の血液でNIPTの検査をしてしまったとします。結果の意味は、あなたが25才である場合と45才である場合で違ってしまうのです。

http://www.perinatalquality.org/Vendors/NSGC/NIPT/

例えばこのサイトを使って計算すると、18番染色体について異常との結果が出た場合、45才だと90%が正しいけれど、25才だと15%しか正しくない。なぜなら45才の方が、もともと染色体異常の確率が高いから。だから、日本の学会は35才以上をNIPTの対象としているのです。

一方、NIPTは優れた検査だと言われる理由は、陰性的中率が非常に高い、つまり見逃しがほとんどないことです。陰性的中率が99.99%といえば、見逃してしまうのが一万人に一人だけ。

だけど、例えば13番染色体について言えば、極端な話、何の検査もせずに全員に「大丈夫」ってデタラメを言っても、もとから千人に一人しか異常はない。陰性的中率は99.9%なです。

また、調べることのできる染色体も限られています。NIPTで異常なしという結果であっても、21、18、13番以外の染色体異常についてはわかりません。調べているDNAも、胎児の細胞のDNA ではなく、胎盤の細胞から出たもの。

結局、NIPTはマス・スクリーニングとしての検査なんですね、もちろん、マス・スクリーニングとしては、私も非常に優れた検査だと思っています。確定診断の羊水検査を全員の妊婦にするのは現実性がないけれど、血液検査なら気軽にできます。

日本では学会肝煎りのコンソーシアムとやらで大層なことになってしまっていますが、欧州では保健行政サービスの一環として日常的にされていて、事前のカウンセリングなんかも必要ないんじゃないか、という話も出ているほど一般的な検査となっています。

日本では遺伝検査というと、検査を強要している訳でもないのに、すぐに「ナチスの優生学が」という話が出てきて議論が違う方向に行きますが、国際学会に行くと、ナチスの優生学に最も敏感なはずな欧州の参加者が、出生した場合の社会福祉コストと検査費用についての経済的比較の研究を、当然のこととして発表しています。はっきり言うと、NIPTは大騒ぎするほどの検査ではないのです

一方で、昔からある羊水検査。日本の学会も、特に規制などしていません。しかし、近年の遺伝検査技術の進歩によって、羊水検査で様々なことがわかるようになっています。以前は染色体を顕微鏡で見て数を数えるだけしかできませんでしたが、今は染色体の微小な欠失もわかるようになっています。また、染色体だけではなく、Whole Exome Sequencing (WES)といって、様々な病気の原因となる遺伝子レベルの異常を調べる検査も行われるようになっています。
















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